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「虫歯がかなり深いようです。神経のすぐ近くまで進んでいます」
こんな説明を受けると、どなたでもご不安になるかと思います。
虫歯が進行し、「神経すれすれ」の状態になると、神経を残すべきか、抜くべきかという難しい判断が必要になります。
この段階では、治療の選択によって歯の寿命が大きく左右される可能性もあるため、正確な診断と丁寧な治療が欠かせません。
この記事では、虫歯が神経に近づいたときに考えられる治療の選択肢や、神経を残すための工夫、そして「もっと早く治療していれば…」と後悔しないためのポイントについて詳しくご紹介します。
東京都世田谷区の下高井戸デンタルオフィスでは、歯質と歯髄をなるべく残す虫歯治療に積極的に取り組んでおります。東京都で丁寧で正確・精密な虫歯治療をお探しの方は、ぜひ当院にお越しください。
Contents
虫歯が「神経すれすれ」と言われたとき、歯には何が起きている?
歯の中には神経と血管が走っている完全に無菌状態の空洞があります。専門用語では歯の神経を「歯髄」、空洞を「歯髄腔」といいます。
虫歯は歯を溶かしながら内側へと広がっていきますが、大きく進行しすぎると歯髄腔まで広がります。
その結果歯髄が虫歯菌に感染し炎症が起こり、強い痛みが出るのです。
歯科医院で「神経すれすれ」「神経ギリギリ」と言われてしまった場合、虫歯が歯髄腔の近くまで広がっているということです。
したがっていつ強い痛みが出てもおかしくない状態であると言えます。
神経すれすれの虫歯でよくある症状
神経すれすれの虫歯ということは、内部で虫歯がかなり広がっています。以下で紹介する症状に当てはまる方は歯科医院への早めの受診をおすすめします。
下高井戸デンタルオフィスは大きな虫歯の治療も得意としているので気になる方はぜひご相談ください。
冷たいものがしみる・一時的な痛み
神経すれすれの虫歯ができていると、冷たいものを口に入れたときや甘いものを食べたときしみることがあります。
ふとしたきっかけで一時的に歯に痛みを感じることがあります。
噛んだときの違和感や鈍い痛み
硬いものを噛んだときに違和感や鈍い痛みを感じる場合も、虫歯が神経すれすれまで進行していることがあります。
無症状の場合も
レントゲンでは虫歯が黒く大きく神経近くまで写っていても、意外に痛みを感じないこともあります。この場合患者さんに自覚がないので、事前に説明しておかないと痛くもないのに神経をとられた、となりがちです。『痛くないから悪くない』ということは、虫歯に限ってはありません。
レントゲンではどう見える?
虫歯の診断ではその歯をクローズアップした小さなレントゲンを撮ることが多いです。実際のレントゲン画像を見てみましょう。
黒い影が歯髄の近くまで進行している状態
レントゲンでは物体があるところが白、なにもないところが黒く写ります。このレントゲンでは黒く色を付けた部分が歯髄腔、青い点線が虫歯で溶けてしまった歯を示しています。

レントゲンでは虫歯はまだ神経に到達していないように見えますが、実際には歯髄腔まで広がっていました。

レントゲン画像は診断の参考になりますが、実態とは異なっていることも少なくありません。このケースのように、レントゲンでは神経のすれすれで止まっているように見える虫歯が、実際には神経に達していることも少なくありません。
神経すれすれの虫歯、治療の選択肢は主に3つ
虫歯が大きく神経ぎりぎりの場合、虫歯を取り切った結果、神経が露出してしまう場合があります。従来の治療法では神経を抜くことしかできませんでしたが、近年では新しい治療法が開発され神経を抜かずに保存することができる場合がでてきました。
どの治療も治療環境や歯科医師の技術に治療の成否が大きく左右されます。例えばラバーダムはどの治療においても感染を防ぎ水分を隔離することから必要不可欠のステップです。しかしながらどの歯科医院でも同じように必ずラバーダムをして治療しているかは定かではありません。下高井戸デンタルオフィスでは、一本の歯を守るためにラバーダムをはじめ万全の状態で治療を行っています。
①神経まで到達していなければ虫歯だけを削る治療
齲蝕検知液を使って、虫歯を染めて健康な歯をできるだけ削らないように、虫歯の部分は確実に削り取
時間はかかりますが、この染めて削っての作業を染まらなくなるまで繰り返します。
その結果、虫歯が神経まで到達していなければ、接着剤を塗布してレジンを詰めるダイレクトボンディングなどで修復します。ただし、神経すれすれということはそれなりに虫歯が大きかったわけで、削った面を確実に封鎖しないと「しみる」などの症状が出やすくなります。確実に封鎖するためには、治療前に接着阻害因子である歯垢を確実に清掃すること、ラバーダムを使って防湿すること、歯から剥がれないように少しつつレジンを硬化させるなど、どこまでこだわって治療しているかは歯科医師によって、かなり異なります。
②歯髄温存療法(神経を残す治療)
これはMTAセメントといわれる材料を使うことで神経が露出した部分を覆う治療法です。学会などで数多くの報告があり、適切に使用すれば高い成功率を誇る信頼性のある材料です。一方で治療には知識と技術、経験が必要です。
その後、神経に到達していない場合と同じくダイレクトボンディングや歯の残り具合によってはかぶせものでの治療で歯の形を回復する必要があります。
痛みがなく、歯髄の炎症が軽い場合に適応
虫歯が神経まで到達している場合は、本来ならば神経を取り除く必要があります。
しかし下高井戸デンタルオフィスでは、MTAセメントを用いた神経を取り除かず保護する治療(歯髄温存療法)を積極的に行っております。
虫歯を完璧に取り除き神経が露出した場合、MTAセメントを用いて緊密に詰め、覆うことで神経を保護します。その結果高確率で神経を保存できます。




そんなMTAセメントですが万能の薬というわけではないため状態の悪い神経を保存することはできません。強い痛みが出ていないなど炎症が軽い場合に限られます。適切に使用するには経験と知識が必要な材料といえます。
下高井戸デンタルオフィスでは移転前の2017年からMTAセメントを用いた歯髄温存療法に取り組み、数百症例の実績があります。興味のある方はぜひ一度ご相談下さい。
③抜髄(神経を取る治療)
神経は歯の中を迷路のように複雑に走っています。そうした神経を取り除き、代わりに防腐剤を詰められるように極細のやすりで内部を削って形を整えます。

その後隙間ができないように緊密に、防腐剤を詰めていきます。この一連の作業を直接見ることが難しい歯の内部で行うため、一般的に根管治療は難しい治療であるとされています。
下高井戸デンタルオフィスでは保険治療では使うことができない良い材料を取りそろえ、マイクロスコープを使用しながら長く時間をとって丁寧に精密根管治療を行っています。

ちなみに歯の内部の神経はこのようになっています。
神経を取る治療(抜髄)は感染の広がりを防ぐ手段として有効

歯髄の炎症が強い場合やすでに死んでしまっている場合には神経を取る治療を行う必要があります。神経ギリギリの虫歯を放置し続ければ歯髄の炎症が悪化し激しい痛みや歯を支える骨の吸収につながってしまいます。こうした炎症の原因となる感染の広がりを抑える手段として神経を取る処置は有効であると言えます。


このように、歯の根が炎症を起こしていると、周囲の骨にも悪影響を及ぼします。このケースでは、抜髄して感染した神経を完全に除去したことで、感染源がなくなり歯の安定につながりました。
ただし抜髄することにも、デメリットがあります。
デメリット:歯がもろくなり、将来的な破折リスクも

神経を取り除く治療では内部から歯を削る必要があります。
そのため神経を取り除いた歯は薄くなりもろくなることが知られています。
せっかく時間と費用をかけて治しても、しばらくして歯が割れてしまい抜歯となるリスクがつきまといます。
神経を残せるかの判断ポイント
ではどのような場合に、抜髄をせず、神経を残す歯髄温存療法を選択することができるのでしょうか。
いくつかのケースをまとめてみました。
神経が残せるかどうかは削ってみないとわからない
人によって症状の出方や歯の硬さは違うため検査だけでは神経が残せるかどうか判断をすることはできません。したがって神経の状態を確認するには実際に虫歯を削るしかありません。
神経が露出しなかった場合
レントゲンでは神経に達しているかどうか微妙な状態の虫歯を削ってみたところ、以下の写真のように神経にはまだ広がっていないことがあります。

このように、削った結果として神経が露出しなかった場合は、神経の処置は必要ありません。
前述のとおり虫歯だけを削って埋める治療になります。
神経の状態が良好な場合
虫歯を削った結果、神経が露出した場合は、神経の状態を確認します。神経への感染の有無によって、その後の治療も変わってくるからです。
この判断にはしっかりした設備と経験が必要です。
通常は神経が露出した直径1.5㎜ほどの小さな穴から、内部の状況を目視で確認します。ごくごく小さな穴を見るため、マイクロスコープや高倍率の拡大鏡が必須となります。そのうえで神経の色、出血の有無や止血の具合、神経が萎縮していないかなどを総合的に判断して診断を下します。

このケースでは、出血の色が鮮やかですぐに血が止まったこと、神経の色も透き通っていることから、良好な状態だと判断できました。
日本歯科保存学会が作成している歯髄保護のガイドラインでも、この診断の難しさは強調されています。したがって歯髄温存療法を受けるのであれば、経験が豊富な先生で治療を受けることを検討するべきでしょう。
神経の状態が不良な場合
神経の炎症がひどく神経を残すことができない場合は、残念ながら神経をとる治療をすることになります。
炎症の強い神経では、ドス黒い血がだらだらと出血しています。

炎症の強い神経を一部えぐり取って良好な神経だけの状態が作れれば保存が可能ですが、深部の神経までそのような状態だと保存は難しく、神経を抜くことになります。
レントゲンで明らかに根が炎症を起こしている場合
神経が完全に死んでしまい炎症が歯を支える骨に広がっている場合は、レントゲンで根の周りに黒く影が広がります。一度強い痛みがでて落ち着いた経過があることが多いです。この状態は神経に炎症が広がった結果、すでに神経が死んでしまっている状態なので、神経を残すことができません。

神経の状態が不良な場合と同じく神経をとる治療をする必要がありますが、痛みや腫れなどの症状が強い場合は抗生物質で症状を改善するところから治療が始まります。
当院の考え方|虫歯は「早めの治療」が重要な理由
神経ギリギリの虫歯の治療をご紹介しましたが、神経が露出してしまった場合の治療はそうでない場合に比べて時間もお金もかかります。ですから、なるべく早い段階で虫歯の治療を行うことが非常に重要なのです。
できるだけ初期虫歯で処置を行う方針の背景
下高井戸デンタルオフィスでは小さな虫歯であっても積極的に治療を行っています。小さな虫歯を必要最小限で削って埋める治療の方が、技術も手間も必要です。それでも患者様のためにそうした治療を行うことには理由があります。
虫歯が小さなうちに処置すれば神経を残せる確率が上がる
そもそも虫歯が神経まで到達しなければ、精密根管治療や歯髄温存療法は必要ありません。
歯の治療は1本の歯につき、1生涯の間に多くても5回までしかできないといわれています。侵襲が多ければその分治療ができる残り回数も減ってしまいます。人生100年時代において一生持つ治療は存在しないからこそ大きな治療はなるべく人生の後半にもってくることが重要です。
ですので、下高井戸デンタルオフィスでは虫歯は小さなうちに治すことを推奨しています。
「様子見」は虫歯の進行リスクが高い
例えば現実にこういうケースがありました。
コロナ禍の前に、定期検診にきたある患者さんに小さい虫歯を指摘しました。その時は患者さんと相談して、定期検診でチェックしていきつつ虫歯が大きくなったら治療すると、決まりました。
しかしコロナ禍で定期検診の来院は途絶え、次回に来院された時は3年が経っていました。
あの時に指摘した小さな虫歯は大きく育ち、結果として歯髄温存療法とダイレクトボンディングで治しました。このように小さいからと油断して様子見をしていると些細なことで来院の間隔が空いた隙に一気に大きく広がり、神経を抜かなくてはならない場合もあります。
ですからなるべく小さいうちに見つけて治療していくことが、虫歯から大切な自分の歯を守ることにつながっていきます。
神経を抜かずに済ませるために必要なこと
虫歯の早期発見、早期治療に積極的な歯科医院で定期的に検診を受ける
定期検診に通えていれば虫歯が大きく広がることを防げる確率が高まります。
虫歯を小さなうちに見つけ、小さなうちに積極的に治療していくことが虫歯から身を守る上で大切です。
歯髄温存療法を行っている医院で治療を受ける
万が一虫歯を治療する時、虫歯が神経に到達してしまっている場合は歯髄温存療法でないと神経は残せません。
ですが虫歯の大きさは実際に治療してみないとわかりません。
ホームページに「歯髄温存療法を行っています」と書いてあっても、コンテンツの1つとして書いてある医院もあるようです。
実際にそういう医院で治療を受けたけど、「うちではできない・もしくは途中の手順をかなりスキップしている」というケースも患者様から聞きます。
- どのくらいの症例数を経験しているのか?
- どういう手順で行なっているのか?(できたら動画や写真を見せてもらう)
医院選びに際して、そういったことを事前に質問するといいでしょう。
歯髄温存療法は無菌状態で行う都合上、治療前にしっかり相談して方針を決めてから治療を受けられる医院を選ぶのがよいでしょう。
まとめ:「神経すれすれ」の虫歯でも残せる可能性はあります
- 神経すれすれの虫歯は、治療をするまで虫歯が神経まで広がっているかわかりません。
- 神経まで虫歯が広がっていた場合は、神経の状態によって治療方針が変わります。
- 神経の炎症が弱く状態が良ければ、MTAセメントを用いて歯髄温存療法を行うことができます。
- 炎症が強く状態が悪い場合は、根管治療で神経を取りのぞく必要があります。
下高井戸デンタルオフィスでは歯髄温存療法、精密根管治療ともに多くの症例を治療した実績があります。また治療には十分な時間を確保しております。興味のある方はぜひ一度ご連絡ください。