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虫歯の見落としは歯医者の責任?

虫歯を小さなうちに見つけ出して治療することは歯科医師の重要な仕事です。

しかし最新の設備を使って熟練の歯医者が検査したとしても、初期の虫歯を一つ残らず見つけ出すことは非常に困難です。特に歯と歯の間や詰め物、被せ物の下側は虫歯の診断が難しい部位として知られています。また虫歯の進行速度は人それぞれですから、検診と検診のごく短い期間で急激に進行することも考えられます。したがって虫歯の見落としを100%歯科医師の責任であると断じることは実態に即していないと思われます。

 

虫歯の見落としはなぜ起こる?定期検診をしても無駄?

①目視や触診だけで診断を下してしまうケース

虫歯が比較的浅い位置にある場合、表面が白濁したり、穴が空いたりすることがあります。そのため視診や触診は非常に効果的な検査方法となります。しかし歯と歯の間に生じる「隣接面う蝕」や歯の内部で広がる「深在性う蝕」などの場合、視診や触診では発見することができません。そのため簡便な視診や触診だけでは虫歯を見落としてしまう可能性が上がります。

 

②担当の歯科医師がまだ経験が浅い場合や専門分野が異なるケース

 エアーで歯面を乾燥させる:歯の表面が唾液で濡れていると、小さな泡や光が唾液に反射して歯面を正確に観察することができません。

これは、自戒をこめて私見を述べさせていただきます。

明らかに穴が開いていたり、色が黒かったりすれば誰でも虫歯を見つけることはできます。問題は歯と歯の間にできた虫歯の場合、外から虫歯の存在を判断するのは至難の業です。もし虫歯になっていれば歯の白い部分がうっすらと灰色になります。内部の虫歯が透けて見えるからです。これを見て虫歯があるかもと思えるかどうかが、歯科医師の能力になります。当院で虫歯のチェックの際に徹底していることがあります。

 

  • 歯面を清掃する:歯垢、歯石、海苔・黒胡麻などの食べかすを綺麗にしておかないと、歯の表面を正確に観察することはできません。
  • ライトを歯に照らす:暗い状況ではよく見えないので、明るくすることが大切です。
  • エアーで歯面を乾燥させる:歯の表面が唾液で濡れていると、小さな泡や光が唾液に反射して歯面を正確に観察することができません。

 

じつは虫歯をチェックする前の下準備が本当に大切です。「何だそんなことか」と思えるかもしれませんが、本当にこの基本を徹底していないと、経験を積んだ歯科医師でさえ虫歯を見逃してしまいます

また患者さん一人ひとりに時間をかけて診療しないと、短時間のチェックでは虫歯を見落とす可能性は高くなります。

当然裸眼でチェックするよりも、ライト付きの高倍率の拡大鏡やマイクロスコープを使用する方が虫歯の見落としは少なくなるのはいうまでもありません。

一流の料理人が厨房を徹底的に綺麗にするように、腕を振るう前に環境を常に整えるのが一流の仕事だと考えます。どんな優れた高価な医療機器をもってしても、その基本ができていないと効果は半減します。

当たり前のことを誰よりも徹底する「凡事徹底」を私たちは目指しています。

③歯と歯の間の虫歯は発見することが難しい

歯と歯の間は隣接面と呼ばれており非常に狭い隙間です。ここは汚れが溜まりやすく、歯ブラシでの掃除がしにくい部分です。したがって虫歯ができやすい部位として知られています。ここにできる虫歯を特に隣接面う蝕と呼びます。

更にマイクロクラックという肉眼で見えるかどうかというサイズの微細なひび割れができやすい箇所でもあります。隣接面う蝕はこのマイクロクラックを伝って歯の内部で素早く大きく広がることがあります。

以上のことから隣接面う蝕は目視で発見しにくく素早く広がることがあるので特に管理が難しいと言われています。

 

④特に初期の虫歯はレントゲンにも映らないことがある

④特に初期の虫歯はレントゲンにも映らないことがある

初期の小さな虫歯はレントゲンに写らないことがあります。

虫歯を見つけるには狭い範囲をより詳しく見られるデンタルX線写真を用いることが重要です。

デンタルX線写真ならば視診だけではわからない隠れた虫歯を見つけることが可能ですがそれでもときにはデンタルX線写真に写りにくく、判別できない場合があります。

この症例では一見するとデンタルX線写真に虫歯を示す黒い像は見られません。ですが実際に削って見ると内部では黒い虫歯が広がっていました。

 

⑤銀歯の下の虫歯が見つからないケース

X線写真には、虫歯は黒く、銀歯は白く写ります。

銀歯の影に隠れている虫歯はX線写真には写らない場合があります。

 

⑥叢生など歯並びが悪く歯と歯が重なっている

⑥叢生など歯並びが悪く歯と歯が重なっている

X線写真撮影において正方線撮影という言葉があります。これは歯と歯が重ならないように角度を調整し、歯と歯の間の虫歯を正しくチェックできる撮影方法です。しかし歯並びが乱れ、歯が重なっていると角度を調整しても正方線で撮影できません。そうすると虫歯が写ってこないので、X線で虫歯を確認することは困難になりますし、肉眼でも虫歯の確認は困難になります

 

⑦定期検診と定期検診の間に急速に進行するケースもある

虫歯の進行速度は人によって大きく違います。そのため小さな虫歯を経過観察とした結果、次の検診の際には歯を大きく削る必要が生じたり、根管治療が必要になるケースもあります。

こういったことを防ぐために、当院では初期の小さな虫歯を発見することに注力し、なるべく初期段階で歯へのダメージが最小限になるように治療を行っています。

 

実際の症例から考える、初期虫歯の見落としに注意すべき理由

 

検診と検診の間で急速に虫歯が進行したKさん

当時、10代だったKさんは、高校2年生で大学受験を控えていました。しかし歯と歯の間に神経に達するくらいの大きな虫歯がたくさんできていました。

普通に保険で治療すれば、おそらく神経を取って根管治療をし、最後は銀歯で被せるでしょう。しかも根管治療は治療回数がかかります。何ヶ月も通院する羽目になるのは簡単に想像できます。

すこしでも勉強時間を確保したい。神経は取りたくない。この2つの要望に答えるには、MTAセメントを使って歯髄温存療法を行い、最小限に歯を削りダイレクトボンディングで埋めていくしかありませんでした。

結果。Kさんの治療は無事終わり、第一志望校に合格できました。ここまでのエピソードはYoutubeで視聴できます。

 

前編 https://youtu.be/Mo2IA544L10

後編 https://youtu.be/7_DGo4Vk-xw



治療最終日にもう一度、虫歯のチェックをしました。しかし、X線にかすかに虫歯っぽい像が写っていたのです。

それを積極的に治療するか、経過を見ていくかを相談した結果、「今後ちゃんと歯磨きをして定期検診に通うから今は治療したくない」とのことでした。

様子を見ると決めた小さな虫歯は、大きく育っていました。

本当にうっすら見える小さい虫歯でしたが、Kさんの意見を尊重しました。しかし時はコロナ禍になり、Kさんが定期検診に来たのは3年後でした。

あの、様子を見ると決めた小さな虫歯は、大きく育っていました。結局その歯も歯髄温存療法を行い、ダイレクトボンディングで治療しました。

この経験から、将来何があるかわからないので、虫歯は治療できる時に治療した方が良いと考えるようになりました。

痛みがなく初期虫歯に見えるが、実は虫歯が神経に達していたYさん

痛みがなく初期虫歯に見えるが、実は虫歯が神経に達していたYさん

Yさんは定期検診で来院した大学生の女性です。
よ〜く見ると奥歯に小さな黒い点がありました。嫌な予感がしてX線写真を撮影してみたら、予感的中、虫歯が広がっていました。まさか神経を取りかねないほどに虫歯が大きくなっているなんて、彼女はショックを受けていました。だって、穴もあいていないし、痛くもないし、しみないし。

結局、MTAセメントを使って歯髄温存療法を行いダイレクトボンディングで目立たなく治療できました。

結局、MTAセメントを使って歯髄温存療法を行いダイレクトボンディングで目立たなく治療できました。

インターネットの医療相談室で、あそこの歯医者に行ったら、痛くもないのに勝手に虫歯を削られ神経を取られた挙げ句に銀歯にされたなんてよく聞く話も、実はこの女性のように痛くはないけど進行していた虫歯って結構多いケースなのです。

定期検診に行ったからこそ発見してもらえる虫歯もあるのです。

 

当院の虫歯見落とし防止のための取り組み

 

①最新の検査設備による早期発見

レントゲンやCTの活用

当院では視診触診による検査はもちろん、レントゲンやCTを用いた検査を実施しています。

どちらかだけに頼れば見つけることができない虫歯があることはご紹介しました。複数の検査法を組み合わせて多角的に調べることで虫歯を見落としてしまう可能性を低くできるように取り組んでいます。

 

透照診

透照診

暗い状態でトランスイルミネーターを使って歯を照らすと、歯間の虫歯が透けて見える場合があります。

このような道具を使って見えにくい虫歯を探知する方法もあります。

暗い状態でトランスイルミネーターを使って歯を照らすと、歯間の虫歯が透けて見える場合があります。

 

②治療のステップを写真で撮影している

 一見すると虫歯が無いように見えても、実は歯の中で大きく広がっている場合があります。その場合、虫歯がある部分はうっすら灰色に見えることが多いです。

これは、歯科医として経験が少ないと、そのうっすら灰色を見逃してしまうかもしれません。

下高井戸デンタルオフィスでは、治療前・治療中・治療後を写真撮影して管理していますので、虫歯っぽい部分の微妙な歯の色のデータが膨大に蓄積されています。

これは、経験だけではなく写真という資料を活用して勤務医の研修にも活用されています。

②隣接面う蝕はルートセパレーターで隙間を広げて目視を実施

②隣接面う蝕はルートセパレーターで隙間を広げて目視を実施

歯と歯の間は狭く、虫歯の検査が難しい部位です。治療するべきか判断に困る場合にはルートセパレーターを用いて目視で確認することもあります。

ルートセパレーターは歯と歯の間に金具を挿入して押し広げる道具です。隙間を広げて目視で虫歯の有無を確認できるようになります。

ルートセパレーターは歯と歯の間に金具を挿入して押し広げる道具です。隙間を広げて目視で虫歯の有無を確認できるようになります。

虫歯の見落としを防ぐために患者様にできること

①虫歯の早期発見、早期治療に積極的な歯科医院を探す

前述したKさんのケースでは小さな虫歯を経過観察することとした結果コロナ禍によって来院できなくなり虫歯が広がってしまいました。定期検診に通えていればここまで虫歯が広がることを防げていたかもしれません。しかし何が起こるかわからないのが人生です。コロナ禍のように予想できないことが起きて通院が難しくなってしまうこともあります。ですから当院では虫歯が小さなうちに見つけ、小さなうちに積極的に治療していくことが虫歯から身を守る上で大切です。

 

②定期的な検診に欠かさず通う

虫歯は痛みなく進行し、痛みが出る頃には手遅れになっているということも少なくありません。

定期的に検診に通うことで虫歯をチェックすることが早期発見早期治療につながります。

そしてできれば視診だけでなくレントゲンや透照診など多角的な検査で細かくチェックできるとよりよいと思います。

 

③検診と検診の間は、患者様のセルフチェックが重要です

検診に起こしいただくことは非常に大切です。しかし人生の中で歯科検診に行ける日よりもそうでない日のほうが圧倒的に多いです。自分自身の大切な歯をセルフチェックすることがお口の健康を守ることに繋がります。ここでは自宅で簡単にできるチェックリストをご紹介します。

 

  • 黒くなっている部分や欠けたりひび割れたりしている(毎日の歯磨きの際に鏡を使って歯をチェックしてみてください)
  • 歯と歯の間をフロスするときに引っかかったりほつれたりする
  • 冷たいものや温かいもの、甘いものを口に含んだときにしみる

 

もしひとつでも当てはまることがあったら虫歯ができている可能性があります。かかりつけの歯医者さんにご相談ください

 

まとめ:虫歯の見落としが不安な方はぜひ当院へお越しください

まとめ:虫歯の見落としが不安な方はぜひ当院へお越しください

初期の虫歯の中には一種類の検査だけでは見つけることが難しいものもあります。

見落としを防ぐには視診、触診、レントゲン、透照診など多角的に検査をすることが重要です。少しの期間で一気に広がる虫歯もあるので早期発見、早期治療をおすすめします。

 

当院は虫歯の早期発見、早期治療に力を入れております。

虫歯でお困りの方、ぜひご相談ください。

 

執筆者情報

写真:瀧本 将嗣

院長/歯科医師

Masatsugu Takimoto

【経歴】
1997年 広島大学歯学部卒業
2004年 シエル歯科クリニック開設
2007年 医療法人社団瀧の会設立

【所属学会】

  • 厚生労働省認定臨床研修指導歯科医
  • 日本臨床歯周病学会 認定医
  • 日本歯周病学会
  • アメリカ歯周病学会(AAP)
  • 日本先進歯科医療研修機関(JIADS)

歯周病系の学会やスタディグループに所属し歯周病治療やインプラントの研鑽を積むが歯髄保存やダイレクトボンディングも得意とする。
長持ちする治療をモットーに、できるだけ患者ニーズに応えられるようにしている。