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歯茎から歯の根が見える原因と治療法|歯茎下がり・根面う蝕・自力で戻せるかを解説

「鏡を見たときに歯が長くなった気がする…」「歯茎が下がって歯の根が見えてきたのが気になる」 このようなお悩みを抱える方は少なくありません。

実は、歯茎が下がる(歯肉退縮)ことで、歯の根の部分が露出して見えることがあります。原因には歯周病や加齢、強いブラッシングのほか、矯正治療や噛み合わせの影響が関わることもあります。

歯茎が下がると、見た目の問題だけでなく「根面う蝕(歯の根の虫歯)」や知覚過敏のリスクが高まり、放置すると歯を失うことにつながるケースもあります。

このページでは、歯茎から歯の根が見える原因や考えられる病気、放置するリスク、治療法や予防策について詳しく解説します。さらに、「自力で戻せるのか?」や「矯正治療後に起こる歯茎下がり」についても触れています。

東京都世田谷区の下高井戸デンタルオフィスでは、歯茎下がりや歯の根の露出でお困りの患者様に対して、原因を見極めたうえで適切な治療を行っています。初期の段階から処置を行うことで、将来的なトラブルを防ぎ、できるだけ審美的で安心できる状態を目指します。精度の高い診療による治療をご希望の方は、ぜひ当院にご相談ください。

歯茎下がりの治療・根面被覆術 症例集

歯茎から歯の根が見える状態とは?

歯肉退縮(歯茎下がり)の仕組み

歯肉が退縮する直接のきっかけは、不適切なブラッシングや清掃不良による歯周病など適切な口腔ケアができていないことにあります。しかし同じケアの仕方でも歯茎が大きく下がってしまう人とそうでない人がいます。これは歯茎の下がりやすさが人によって大きく違うことが原因です。下がりやすさを左右する要素はいくつもあり、それらが複合的に混ざり合っていることが歯肉退縮の実態を掴みにくくしているのかもしれません。

歯が長く見える・根の色が透ける見た目の変化

歯茎が下がるとそれまで隠れていた歯の根が露出してきてしまい、歯の形自体は変わっていないのに歯が長くなったように見えてしまいます。

歯肉退縮は若者でも起こりえますし、少しづつ進行していきます。

歯茎から歯の根が見える原因

歯茎下がりの原因をかいつまんでいくつかご紹介します。多くの場合歯肉退縮はこれらの原因が複合して発生します。

歯周病による歯肉退縮

歯周病は歯を支える骨が吸収してしまう病気です。歯に歯垢や歯石がついたまま時間が経つと歯茎や骨が炎症を起こしてしまい、その結果として骨が吸収するのです。

健康な歯茎の厚みは3mmと決まっているため、歯茎を支える土台の骨の高さが減ってしまうと必然的に歯茎も下がってしまうのです。

 

加齢やブラッシング圧の強さ

歯茎に継続的に刺激が加わると歯茎が下がってしまいます。 歯茎への継続的な刺激の代表格は誤った方法による歯磨きです。自分では普通にやっていると思っている歯磨きの方法が実は自分の歯茎にかなりのダメージを与えている可能性があります。 特に、オーラルケアへの関心がかなり高く、誤ったブラッシングを熱心に行なっているせいで歯茎が下がってしまう方もいらっしゃいます。 次の一つでも当てはまったら要注意です。

  • 「かため」や動物の毛など硬すぎる歯ブラシを使っている
  • 歯ブラシを5㎝くらいの大きな幅で動かしている
  • 歯ブラシの毛が曲がるくらい強く押し付けている

一方で加齢も歯茎下がり原因のように感じられるかもしれません。確かに加齢に伴って頻度が増加していく傾向にあると感じている先生が多くいらっしゃいます。しかし加齢そのものが原因というよりは歯肉へのダメージが蓄積した結果によるものだという考え方が現在のコンセンサスになっているようです。

歯茎や骨が薄い 歯茎や骨の厚みは歯肉退縮の進行しやすさを大きく左右する要素の一つです。歯肉の厚みが1mm以下の場合、将来的な歯肉退縮のリスクが高いということが報告されています。一方で歯肉の厚みが1.5mm以上あれば長期にわたって退縮のリスクが低いという報告もあります。

そして残念ながら日本人を含むアジア人は厚みが1mm以下の人が多く、世界の人々と比べても特に歯茎や骨が薄いことが知られています。

ですからこの記事を読んでくださっているあなたもハイリスクである可能性があるかもしれません。

ちなみに1mm以下の厚さの歯肉では歯周ポケットに挿入した器具が透けて見えます。

こういった方は将来的にさらに歯肉が下がってしまうリスクが高いため、根面被覆で歯肉の厚みを増やすことが理想的です。  

歯並び・噛み合わせの不良

歯は歯を支える骨のなかに、歯根がすっぽり包まれるようにして生えています。この歯を支える骨を歯槽骨といいます。歯根が歯槽骨からはみ出してしまうということは歯茎を支える骨がなくなるということですから、歯肉退縮の原因となってしまうのです。

歯が骨の中央に近い位置にあれば歯茎や骨の厚みを確保できる一方で骨の外側に近い位置にあると必然的に骨や歯茎の厚み、高さが少なくなってしまう傾向にあります。歯並びが乱れていて八重歯のようになっている歯や矯正治療で歯の位置を変えた歯に関しては歯肉退縮のリスクが高いと言えます。

また噛み合わせが悪く、強い力が頻繁に加わる歯では歯周病が進行しやすいことが知られているため結果として歯茎が下がりやすい状態にあると言えます。  

小帯に引っ張られている

口の粘膜には小帯と呼ばれるヒダのようなものがあります。このヒダの位置が歯茎の縁に近いと継続的にひっぱられる力が働くため歯茎が下がりやすくなります。

矯正治療による歯肉退縮

矯正治療中は特に歯肉退縮のリスクが高いとされています。矯正の経験がある人は、矯正治療を受けていない人に比べておよそ4〜5倍も歯肉退縮がおきやすいというデータがあります。矯正治療は歯を移動させる治療ですから、歯の位置と深く関わります。

元々の歯並びによっては歯を外側に動かす場合があり、それが歯肉退縮を引き起こす可能性があります。特にこれは骨が薄い下顎の前歯で顕著で、審美的な問題を引き起こします。

さらにワイヤー矯正の場合は歯に装置を接着する都合上どうしても汚れが溜まりやすく虫歯や歯周病を引き起こしてしまいます。その状態が2〜3年続くのですから矯正が終わる頃には虫歯や歯周病で大変なことになっていたという例も少なくありません。

矯正治療中でもしっかりと定期的なメンテナンスを受けられることをお勧めします。

矯正治療と歯茎下がりについてさらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

>>矯正後に歯茎がさがるのはなぜ?

歯茎から歯の根が見えることで起こるリスク

知覚過敏になりやすい

歯は象牙質とエナメル質の二つの材質で構成されています。エナメル質は非常に硬く感覚がありません。象牙質は軟らかく痛覚があります。

歯肉退縮によって歯根が露出すると無防備な象牙質が剥き出しになるため冷たいものや歯ブラシで染みることがあります。これを知覚過敏と言います。

放っておくと痛みは徐々に緩和していくことが多いですが、後述の根面う蝕やNCCLへと進行することがあるため油断は禁物です。  

根面う蝕(歯の根の虫歯)のリスク

歯肉退縮によって露出した象牙質は虫歯にもなりやすいことが知られています。これは象牙質が酸に弱く、虫歯が素早く大きく広がってしまうためです。

実は根面う蝕は高齢社会の日本において問題になっています。年齢を重ねると唾液の量が減ってきます。唾液の役割は食渣を洗い流す作用があるので、唾液量が少なくなると虫歯になるリスクが跳ね上がります。糖尿病や高血圧の有病者の数が増え、それらの薬の副作用に口渇があります。

その上、介護が必要になったり、入退院を繰り返すようになって自分のことを自分でができなくなると、どうしても口腔ケアは後回しになってしまいがちです。

そんな時に象牙質が露出した歯がたくさんあると根面う蝕が同時多発的に進行し、治しても治しても再発してしまうという状態が増えているのです。根面う蝕の対処法は、虫歯の進行を抑制するフッ化ジアミン銀や高濃度のフッ素を塗布するくらいしかありません。

全身的な病気がある場合は歯科医院に治療に通うのも難しいでしょうし、かといって血圧や常用薬の関係で抜歯も難しい場合があります。

人生100年時代だからこそ根面う蝕で困らないように、将来を見据えて打てる手を打っておく必要があると思います。  

NCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)のリスク

虫歯になっていないのに歯の根元がえぐれてしまうことがあります。これをNCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)といいます。

原因は様々な要素の複合的なものと考えられていますが根本的には露出してしまった象牙質がダメージを受けることで進行します。

知覚過敏を引き起こしたり、清掃性の悪さから根面う蝕の温床になったりします。

審美面での老けた印象

笑顔が自然で美しく見えるための歯の縦横比は、研究によって明らかになっています。歯肉退縮によって歯茎が下がると必然的に歯が縦に伸びたような印象を与えるため審美面で問題となる場合があります。

歯は加齢に伴って縦横比が縦に伸びる傾向がありますから、多くの場合老けた印象を与えることになってしまいます。

実際に13歳から61歳までの人々の前歯を分析した研究では年を重ねるごとに歯が縦長に見えるようになると結論づけられていました。※1 この事実には古の人々も気づいていたようで、英語圏には ”Long in the tooth” (年老いた) という慣用句があるようです。

※1  Aging changes in maxillary anterior teeth in untreated individuals: an observational longitudinal study (2023 Gabriela Natsumeda et.al.)  

歯茎から歯の根が見える場合の治療法

歯周病治療(歯石除去・再生療法)

歯周病は歯の表面についた歯垢や歯石が原因で歯茎や歯を支える骨に炎症が起きる病気です。歯を支える骨に炎症が起こると防御反応によって骨が溶けて下がってしまいます。

炎症を治して再生療法をしたとしても回復できるのは骨の凹みが浅くするところまでで高さそのものを回復する事はできません。しかし放っておいても自然に治癒する事はなくジワジワと悪化してしまいます。

ですからまずは歯周病治療で原因を除去することが大切です。

根面被覆術(CTG・VISTAなど)

下がってしまった歯茎を元に戻す根面被覆術という手術があります。歯茎下がりを根本的に治療できるのは現状この方法だけです。

口蓋側から結合組織を採取して歯肉が下がった部位に移植します。歯茎の高さ、厚みが増えるため、歯肉退縮が根本的に改善するばかりでなく再発しづらい状態になり予防することができます。

根面被覆には様々な術式があります。そのうちの一つをご紹介します。

まず移植する組織を上顎の裏側から採取します。その後、歯茎が下がっている部分とその周囲の歯肉をポケット状に剥がします。その内部に採取した組織を縫い付けて全体的に引っ張り上げながら固定します。

 

 

手術に対して痛みは2、3日でおさまる場合がほとんどですし、傷自体も1ヶ月もすれば目立たなくなります。

歯茎の高さ、厚さが改善されるため、気になる歯肉退縮が根本的に改善するのに加えて歯肉退縮の再発リスクを抑える事も期待できます。

知覚過敏・根面う蝕の治療

知覚過敏用薬剤やコーティング

知覚過敏で染みる場合、その症状を緩和する薬剤があります。5〜10分程度ですぐに処置できるという利点がある反面、効果が出にくい場合があったり時間が経つと効果が薄れることがあります。そしてNCCLや歯肉退縮それ自体の進行は止められません。

当院では初期虫歯の早期治療を推奨しています

歯肉退縮の量が少ない場合は白い樹脂で歯の形を整えることで自然な見た目を回復する方法もあります。

特にブラックトライアングルの治療には適していて、短期間での改善が見込めます。また下のような歯肉退縮に対しても治療の選択肢の一つとなります。

ダイレクトボンディングをすることで歯肉退縮による知覚過敏やNCCLを改善することができます。

見た目も白くする事ができるのである程度は馴染みますが、歯の縦横比は変更できないため不自然な印象になってしまう場合があります。また歯茎は薄いままなので歯肉退縮の進行を止めることができません。

ダイレクトボンディングについてはこちらの記事もご覧ください。

>>当院のダイレクトボンディングについて
>>症例紹介:30歳 女性 矯正後のブラックトライアングルと虫歯をダイレクトボンディングで治療  

歯茎から歯の根が見えるのは自力で戻せる?

セルフケアで改善できる部分と限界

歯茎から歯の根が見える場合、セルフケアで歯茎を元に戻すことはできません。しかし誤ったセルフケアの方法を改善することで進行を遅らせることができます。

自分では正しいセルフケアをできていると思っていても、誤った方法でケアをしている方は案外多いと感じます。

正しくセルフケアできているか確認するためにも、まずは歯科医院で相談することをお勧めします。

歯茎の再生は基本的に専門治療が必要

下がってしまった歯茎の高さを回復するには根面被覆術を受けるしかありません。

根面被覆術のような歯茎の審美手術は非常に繊細で些細な違いが術後の仕上がりに大きく影響します。そのため非常に難しい手術の一つにカウントされています。

一般的な歯科医院では対応していないこともあるので信頼できるクリニックを探してみるのが良いでしょう。

東京都世田谷区の下高井戸デンタルオフィスでは根面被覆術で歯茎下がりに対応する治療を積極的に行っています。ぜひ一度ご相談ください。

矯正治療後に歯茎が下がった場合の対処

矯正治療は多かれ少なかれ歯肉退縮の進行を早めます。口元の見た目を改善するために矯正治療を受けたのであれば歯肉退縮を起こしてしまっては元も子もありません。

完全に防ぐことはできないからこそ、費用と時間をかけた後で後悔しないために、歯肉退縮が起きてしまったらどう対応するかをあらかじめ矯正医と相談しておいたほうがいいでしょう。

万が一歯肉退縮が起きてしまった時に、根面被覆術を行える先生と提携している矯正医であれば安心感があると思います。

矯正治療と歯茎下がりについてさらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

>>矯正後に歯茎がさがるのはなぜ?

自宅でできる歯茎下りの予防・ケア

歯茎に優しい正しい歯磨き方法

歯肉退縮が起こりにくい磨き方のポイントとして、一般的に言われているのはこの辺りです。

  • 毛の硬さはやわらかめor普通
  • 動かす振り幅は1〜2㎝。大きなストロークはダメ
  • 毛先がたわまない優しい力
  • 歯ブラシは握り込まない
  • 荒すぎる研磨材が入っている歯磨剤は使わない

歯肉退縮をコントロールしたいなら気を付けてみる価値があるかもしれません。 ですが口腔内の状況や道具の組み合わせで最適なメンテナンスの方法は大きく変わります。 自分で確認するのは困難ですから歯科医院を受診して歯科医師や歯科衛生士にみてもらうことをお勧めします。  

フッ素や知覚過敏ケアグッズの活用

根面う蝕や知覚過敏を予防するためにフッ素や知覚過敏予防効果のある歯磨き粉を使用するのも良い選択肢だと思います。気になる症状に合わせて選んでみると良いでしょう。 ホワイトニング効果のあるものなど強力な研磨材が入っているものは歯肉退縮や知覚過敏を悪化させてしまう可能性があります。研磨材の少ないものやジェルタイプのものを選んでみてもいいかもしれません。 大切なのは使い方で、ブラシにたっぷり乗せて磨くことと、磨いた後に口をすすぐ回数を極力抑えることが大切です。  

定期的な歯科検診・クリーニング

歯肉退縮の予防で大切なのは異変に早期に気づき対処することと、歯周病をコントロールすることです 歯肉退縮の進行度は専門的にはCairoの分類のRT1〜RT3で分類されています。

数字が大きくなるほど重症で治療が難しいとされています。裏を返せば歯肉退縮は軽度であるほど治療が成功しやすいと言えます。

ですから定期的にメインテナンスを受けることで異変に素早く気付き、対応することが歯肉退縮を予防する上で非常に大切です。

また、歯周病の原因は歯についている汚れや歯石です。どんなに歯ブラシが上手な人でも100%完璧に汚れを取りきることはできません。鏡で見てみて磨けたと思っても案外歯垢は残っているものです。

定期的に歯科医院に通ってメンテナンスを受けることで、どうしても取り除けない部分の汚れをとってもらうことができます。

歯肉退縮を予防するには定期的にメインテナンスで受診することが非常に大切になります。

 

歯科医院を受診すべきサイン

①歯がしみる・痛む

歯がしみたり痛みがある場合、まず虫歯の可能性があります。その場合は治療が必要ですし、知覚過敏によるものの場合は放っておくとNCCLに進行したり、退縮が進行したりすることがあります。いずれにせよ痛みは口の中のトラブルを教えてくれています。無視せずにぜひ歯科を受診してください。

②歯茎の腫れや出血

歯茎が腫れていたり、歯ブラシなどふとしたときに出血する場合、歯周病が進行している可能性があります。今回紹介した歯肉退縮はもちろん、さらに進行すると歯を失うことになってしまいます。甘く見ずに必ず歯科を受診しましょう。

③歯が長くなったと感じる

鏡を見た時など自分の歯が長くなっていると感じた時は痛みなどがなくても遠慮せずにご相談ください。歯茎の退縮や歯の形は思っている以上に見た目の印象に影響を与えます。さらに進行する前に対策を打つことが大切です。

まとめ:受診サインに当てはまる方はぜひお問い合わせください

東京都世田谷区にある下高井戸デンタルオフィスでは、歯肉退縮の根面被覆術による根本改善からダイレクトボンディングによるカモフラージュ治療まで対応しております。

相談だけでも結構ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

執筆者情報

写真:瀧本 将嗣

院長/歯科医師

Masatsugu Takimoto

【経歴】
1997年 広島大学歯学部卒業
2004年 シエル歯科クリニック開設
2007年 医療法人社団瀧の会設立
2024年12月 下高井戸デンタルオフィス移転開業

【所属学会】

  • 厚生労働省認定臨床研修指導歯科医
  • 日本臨床歯周病学会 認定医
  • 日本歯周病学会
  • 日本顕微鏡歯科学会
  • アメリカ歯周病学会(AAP)
  • 日本先進歯科医療研修機関(JIADS)

歯周病系の学会やスタディグループに所属し歯周病治療やインプラントの研鑽を積むが歯髄保存やダイレクトボンディングも得意とする。
長持ちする治療をモットーに、できるだけ患者ニーズに応えられるようにしている。